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2006年12月03日

台風9号(ベトナム名)接近

雨・うす曇

午前6時起床。
日課の血圧、体重測定。

午前7時、NHK日曜討論を聴く。
自民党復党問題、教育基本法改悪、防衛省「昇格」問題。

午前9時、ベンゲー市場近くのコムデイア屋へ。
ご飯と野菜炒めを買う。1万ドン(70円)。
午前10時低温浴20分。
NHKのど自慢を見ながらフダ缶ビール2本。

トンチンカンホテルの日本人スタッフ・大塚さんたちは
午前11時半から日本料理店で食事をするとのこと。
私はそれ以前に食事をして昼寝。

午後1時10分。ベトナムテレビの「緊急放送」を見る。
台風9号が、ベトナムの海岸に接近中とのこと。
ハノイに副首相を本部長とする「台風9号特別対策本部」
が設置される。政府から緊急指示がだされる。
●危険地域(フエより南;特にクアンガイから南端の
  カーマウ)では安全を第1に警戒態勢を作ること

明日12月4日にクアンガイ省からカーマウまでの
海岸に上陸する可能性大。
そのまま西に直進するとフエに上陸する。

早速、バオミンさんに連絡し、更に詳しい情報を取って
もらう。万一の可能性も考慮し「子どもの家」への
食料の備蓄、安全の再確認、ベトナム事務所員、
日本人スタッフの安全確保などについての対策を
考える。

明日(12月4日)午後5時に京都青年会議所の
T氏とホーチミン市で会う約束をしているが、
飛行機の切符が取れない。ダナン発午前8時という
飛行機しかない。更に明日の台風事情もあり、
飛行機が飛ぶかどうかも疑問。
夕方、バオミンさんから連絡。明日午前8時ダナン空港発の
切符しか取れない。午前4時半にフエを出ないとダナン空港
からの飛行機に間に合わない可能性があるとのこと。
夕方、12月4日午前8時ダナン空港発の飛行機の切符を
届けてくれる。という訳で明日は、午前4時半にフエを
出なければならない。という事は、午前3時半起床。
今夜は徹夜か? 明日の台風も気になる。
ダナン空港に着いてから「台風9号のため飛行中止」
などとならないことを祈るのみ。

午後2時から読書。
「スパイM」(小林峻一、鈴木陸一著:文言春秋)読了。
上野アメ横近くの古本屋で150円。1994年版。
読んでいて引き込まれる。

25歳頃に「昭和史発掘」(松本清張著)で戦前の
日本共産党に特高警察のスパイが潜入し、最高指導者と
なり、川崎第百銀行大森支店を襲撃し、3万円相当(現在
の数億円)の現金を強奪した事件があったということは
読んだことがあった。
本著は、1991年のソ連崩壊後、戦前の日本共産党や
ソ連、コミンテルンなどの資料が公開されるに至り、
暗闇になっていた資料や現存する関係者の証言などを駆使して、
戦前の日本共産党に潜入した日本史上最大といわれる
「スパイM」の生い立ちから死までを描いている。
通称スパイMと言われる所以は、パーティーネーム(党内名)
を松村昇と名乗ったためである。本名は飯塚みつ延。
没落士族の子ども。成績優秀だったが、家が貧しく進学できず。
南葛地域で労働運動に参加。創立から何度か弾圧を受け壊滅
しつつあった日本共産党からの指示でソ連のモスクワにある
「クートベ」(東洋勤労者共産大学)に派遣され頭角を現す。
日本へ帰国後、渡辺政之輔の指導下に入り、共産党の活動を
行うが特高警察に逮捕。その際、特高警察のスパイとなる。
その後、度重なる弾圧で壊滅した共産党の事実上の指導者
となり、毛利特高課長の手引きで共産党を拡大し、戦前では
最大の共産党を作る。そして、徐々に特高警察の指導で
「極左戦術」を取らせる。金持ちの共産党支持者に自宅から
株券やお金も持ち出させる、銀行強盗、やくざを使っての
詐欺、密輸などを行う。更に「エロ映画」を作り、販売上映会
を行い金を稼ぐ。最後には、女性党員に売春までさせるという
「ハレンチ共産党」というイメージを作り上げた人物がスパイM。
こうして戦前の共産党は国家権力のスパイの巧みな指導で
壊滅していくことになる。

この本を読むと「スパイM」の生い立ちとソ連留学中に起こった
レーニンの死去、それに続くソ連共産党内の権力争い、
そしてスターリンが行ったトロッキーなどへの粛清。こうした
一連の出来事を4年近いソ連留学中に見ているスパイM
が共産主義の祖国と言われたソ連の恐ろしさと隠された
実態を知ってしまったということが、共産主義思想に対する幻滅
、そして特高警察のスパイとして落ちてゆく下地になっている
ように思われる。また、国家権力がいかに陰湿に時間をかけて
反対勢力を駆逐していくのかがわかる。
スパイMの秘密通報で「小林多喜二」「岩田義道」など当時の
共産党の指導者が次々に逮捕され、警察で虐殺されていく。
当時の日本共産党への支持協力者は多数に上っている。
俳優の小沢栄太郎、佐々木考丸、中野重治、秋田雨雀、
大宅壮一、山本有三、林芙美子、堀辰雄、高見順、太宰治・・。
また、スパイMが主導権を握る前の共産党の幹部は、
三田村四郎、鍋山貞親。二人とも戦後は反共主義となり
反共労働運動を指導している。また、水野成夫は、戦後、
産経新聞の社長。

一人の人間の「人生」はやはり「歴史」に規定される。
その時代から逸脱はできないということを改めて感じた。
「その時代」という制約の中で悪戦苦闘して生きてゆくという
宿命を持っているのだ。時代に翻弄されたとも言えるMの人生
ではあった。スパイM」は1965年に亡くなっているが
戸籍がなく、火葬許可がなかなか出なかった。
私たち「団塊の世代」と言われている人たちが過ごした
1960年から1970年。それぞれの人がそれぞれの1960年代
を過ごしてきた。それぞれの人たちが、1960年代という
「その時代」に規定されて生きてきた。そして2006年の
今も心のどこかに「その時代」を引きずって生きている
のだ。


当時、天皇制打倒を主張し、日本の民主主義革命・
社会主義革命を目指した若者たち(多くが20代・30代)。
そしてそれらの「革命家」を一網打尽に取り押さえようとした
国家権力の歯車だった特高警察。本書はこの両者への
綿密なインタビィーによって成り立っているノンフィクション。
温故知新。古きを知ることは、今を知る一番の近道。

憲法改悪、教育基本法改悪、共謀罪新設、防衛省設立、
愛国心の強調・・・・・。こうした「美しい国」安部政権の
めざすものが何なのかが見えてくるというものである。

フエに帰って1週間。久しぶりにゆっくりとした1日を過ごした。
夜、フダ缶ビール2本。コムデイア屋で野菜炒め、豚肉煮、
モヤシ炒めを買う。

投稿者 koyama : 2006年12月03日 15:13

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