« 京都フェアートレードの皆さんと打ち合わせ | メイン | ウオーキング »

2006年10月24日

終日、休息

終日、雨。すごく寒い。

「兄弟」(なかにし礼 著:文春文庫)
古本屋で350円。

なかにし礼の「赤い月」を以前読んだが、その続編。
赤い月が、なかにし礼一家が満州でどのような生活をし
どのようにして逃避行を行い、日本へ帰って来たかが
小説として書かれていた。

『兄弟』は日本へ帰国し、小樽で生活し、自宅を担保に
30万円という大金を借り、増毛で「にしんの網」を3日間買い、
3日目に大量のにしんが捕れるが、兄が更に儲けようと
本土ににしんを売るため船で日本海をわたる。大しけで
結局、大量のにしんを日本海に捨て、すってんてんになる。
そこからなかしに礼と兄、家族の苦闘が始まる。
兄は、その後も仕事をしないで借金を重ね、全て、弟の
なかにし礼は尻拭いをする。
兄と弟のなかにし礼との確執という設定ではあるが、
兄の虚無的な生活と人生は、「特攻隊」予備軍としての
訓練中に戦争が終わったことから始まる。
なかにし礼の戦後の貧困と苦闘、兄と家族との確執など
の全ての出発点が「中国からの引き上げ」から始まる。

私は自分と我が家の経歴とを重ねながら読んだ。
結局、兄も弟も「国家」というものを根本的に信じていない
というスタンスをもって戦後を生き抜いてきた。
終始貧しさとの闘いの中で苦闘した兄と弟。
なかにし礼の表現力に感嘆する。「赤い月」よりも
表現力と説得力のある小説。

石原慎太郎の「兄弟」も読んだ。良く出来ていた。しかし、
なかにし礼の「兄弟」を読んでしまうと、石原慎太郎の
「兄弟」はとても薄っぺらいものに感じた。
石原慎太郎が逗子でヨットに乗って遊んでいる調度その時、
なかにし礼は兄の借金に追われ、東京の3畳の安下宿で
ゴキブリに追われ、布団の周りにDDTを巻き、新聞紙を布団に
かぶせて寝るという生活をしていた。
なかにし礼が作詞家として出発するのは、なかにし礼が新婚旅行
に行き、ホテルの庭にいると、石原裕次郎は映画の撮影に来ていた。
ホテルの庭で偶然裕次郎に「新婚旅行ですか?」と無名の
なかにし礼が声をかけられ、この一言がなかにし礼にシャンソンの
訳詞、流行歌の作詞で生きていく道を開いたのではある。

この 本を読むと、「人間は時代に制約される」ということが分かる。
その時代から超越は出来ない、時代と共に人間は生きるというとが
分かる。1947年(昭和22年)生まれの私もその時代の中でもまれ
時代の経済に制約され、時代の政治に追い詰められ生きてきたの
である。時代を恨むことは出来ないが、時代を変えようとする努力は
出来る。1947年は日本国憲法、教育基本法、独占禁止法が
施行された年である。これら憲法、法律の出生と同時に生まれた
私がこれらの影響なしに今日まで生きてくることは出来なかった。
「時代が人間を作る」と言うのは、本当だと「兄弟」を読んで
感じた。

同じ「兄弟」でも前福島県知事兄弟の腐敗ぶり。
教育再生会議で「子どもたちに規範意識」を持たせるという。
その前に大人たちこそ、規範意識がないのではないだろうか?

昨年9月11日の「郵政民民営化選挙」。自民党は刺客を
立てて、国民に訴えた。郵政民営化が構造改革の原点だと。

昨日、安部首相は、昨年の郵政選挙で刺客を立てて落選
させようとした、元自民党議員や落選した元議員を入党
させるという。議会制民主主義の原点である総選挙である。
公党が国民に対立候補を立てて「あなたの考えは間違いです」
と訴えたのである。その相手を入党させるということは
道義・道徳・国民の規範としても最低の行動である。
安部首相が教育基本法を「改正」を言う前に、自分の規範意識が
相当低下していることを自戒すべきでである。
首相になる前に安部首相が言っていたことと首相になって
言っていることが大分違う。以前の支持者から相当な批判がで
いるという。非核三原則を堅持するといっていることは良いことだ。
でも以前、言っている自らの発言との整合性がない。
そのことについて、自己釈明が必要である。政治だから
事情に合わせて意見は変わるではそれこそ「社会的規範意識
がない」ということになる。


午後、池袋へ。本屋を数軒回る。外は豪雨。西口、地下には
私と同年齢の ホームレスの「おじさん」たちが、床に座り、
おにぎりを食べていた。私と同じ年恰好のこの人たちが
どんな事情でホームレスになったのか? 
脇を通りながら、何かやるせない気持ちになった。

日本ハムが勝った。よしよし。

17通のメール受信。11通のメール送信。

投稿者 koyama : 2006年10月24日 21:16

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://koyamamichio.com/mt-tb.cgi/983

コメント