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2004年03月24日
小澤征爾・大江健三郎対談
午前9時、トゥアティエンフエ省観光局長との懇談だったが、事情で延期。
午前9時半、緒方萌さんと1時間ほど進路・人生などを話す。
昼寝をせず、「同じ年に生まれてー小澤征爾・大江健三郎ー音楽、文学が僕らをつくった」(中公文庫)を読む。
左(同じ年に生まれて)
右(地球の歩き方ツアー参加のO君)
先日「地球の歩き方ボランティア体験ツアー」でフエを訪問した東京のO君からお礼のメールと写真が送られてきた。年間500人から1000人近くの訪問者を受け入れているが、こうしてお礼を言ってくれる訪問者は必ずしも多くはない。今時の若者と言っては失礼だが、なかなか礼儀のしっかりした学生さんではある。
『小山先生 他、ベトナム事務所スタッフの皆様
今回「地球の歩き方」に参加したOです。覚えておられますでしょうか?
一昨日帰国し、今は普段の生活に戻っております。
ベトナム・フエ滞在の際には大変お世話になりました。
特に小山先生の考え方、姿勢は僕の価値観を大いに揺さぶるものであり、大変考えさせられることの多いものでした。
以前から「ボランティア」と言うものには興味があったのですが、何をすればいいのか分からず、漠然としたまま時間だけが過ぎていました。しかし、今回のベトナム訪問を経て、多少なりとも自分のできる事が見えてきた気がします。このツアーを単なる「体験」に終わらせず、次へのステップとして役立てたいと考えています。機会あればまた、「子供の家」を訪れたいです。次はしっかりとベトナム語を学んでから・・・。僕のカメラで撮った写真を一枚添付いたします。もしよろしければ、写ってる子供達にも見せてあげていただければと思います。最後にもう一度、本当に有難うございました。短いですが、失礼いたします』
こうして一人でもアジア、ベトナム、「子どもの家」での体験で何かを感じてくれれば私たちとしては、本当に嬉しい限りである。O君に感謝。(写真等使用はO君の了解済み)
3月12日にフエへ戻り、毎日訪問者への対応が続き忙しかった。久しぶりに訪問者もない1日だった。
昨夜、目が覚めて読み始め、面白いので今日一気に読んでしまった。小澤征爾と大江健三郎は1935年生まれである。ということは、1945年の敗戦時10歳(小学校4年か5年である)。小澤は中国の奉天で生まれ、大江は愛媛県で生まれている。
この対談は2000年8月と12月に行われた。
対談時には65歳。この世代は、軍国主義の戦争と戦後の民主主義との両極の価値観を体験し、国家というものの本質を体験的に理解している世代でもある。文学と音楽という体験を通して、二人が行き着く先は、21世紀論である。二人の共通した21世紀人間論は、大江が代弁して「インスティトューション(組織)ではなく個、しかも新しい個、個として責任の取れる人、個として誇りの持っている人が多く出ること」を期待している。
二人は、戦争と戦後の体験を通して、国家という幻影を体験し、最終的には「個」の確立、自立した個に辿りついている。組織に縛られない個人、同時に責任をもって行動できる個人。ボランティアやNGOを通してこうした若者が多く育ってきているように思える。
戦後59年。日本の組織、会社、政党、組合などあらゆる組織は「金属疲労」を呈している。組織にしばられ、自分の意見や考えで行動出来ない社会が日本に出来上がってしまっている。今、日本社会、あるいは世界そのものが大きな転換点に立っている。こうした時に一番私たちに求められるのは、一人一人の人間が自分を持つことである。自分の目で見て身分の体で確かめた自分の意見、自分そのものである。組織や会社などに頼らずに生きていける自立した個人こそ21世紀の世界の人間に求められているものではないだろうか?
O君をはじめ、「子どもの家」などを訪問し、ボランティア体験をした若者が、「人の受け売り」ではなく、自分の目と体で確かめた体験・行動を基礎に自分という「個」ををもってもらえれば、私たちが多少なりともお世話をした甲斐があるというものである。
投稿者 koyama : 2004年03月24日 21:43
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